映画「大きな家」をみました。

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現在放映中の「大きな家」をみてきましたので、感想を書いていきたいと思います。
この映画はドキュメンタリー映画であり、登場する人々は現在もご自身の人生を生きておられます。その事実もあって、様々なことを考えさせられました。
以下、ネタバレ注意です。











「どうかこの映画に登場する人々が幸せに生きていけますように」

そう願わずにはいられない映画でした。
本作品はドキュメンタリー映画ですので、当たり前ですが、彼らの生活がとてもリアルに感じられました。施設を出た方の行く末は実にさまざまであること。子供達の中には、幸せな人生だとはとても思えない人もいること。頑張っても、なかなか願ったような成果が得られないこともあること。そうした、生きることの大変さ、理不尽さを様々なシーンで感じました。
しかしだからこそ、なんとか自分の足で立って生きていこうとする子供たちの姿に、胸をうたれました。10代と言えば、ただでさえ多感な時期です。施設の子供達も、周囲と自分とを比べてしまうことはどうしてもあるでしょうし、「18歳になれば皆ここを出ていかなくてはならない」という事実に対しても様々な感情があると思います。皆、やり場のない感情を抱えている。それでも、今できること、やっておきたいと思うことを頑張っている姿に、自分も襟を正して生きていかねばならないと考えさせられました。

なお、子供たちが抱いている葛藤は安易には解決せず、現在進行系に続いているのですが、それこそが本作品の大きな特徴であると思います。本作品はしばらくの間子供たちに密着して撮ったそうですが、「こういうストーリーになるように映画を作ろう」と前もって決めてはいなかったと聞きます。そうした、作る側の思惑をなるべく排除してリアルな姿を描こうと試みたからこそ、みる者の心を大きく動かす作品になっているようにも思いました。

また、他に類を見ない試みで撮られたであろう本作品ですが、撮る側にも覚悟が求められる作品だったのではないかな、とも思いました。本作品は、最初と最後の両方で「登場する人々に害が及ばないよう配慮をお願いします」という注意書きが出ますし、今後はDVD化などもいっさいしないそうです。下手をすると制作陣は誰かを傷つけてしまうような恐れがあると思うし、収益についてのリスクも完全に無視はできないはずです。それでもこうして公開に至ったのは、制作陣にも並々ならぬ熱意があったのではないかなと想像しました。

子供たちについて。映画の性質上、この場で細かいところにまで触れるのは避けるのですが、印象的な姿、言葉が沢山ありました。
特に印象的だったことを1つだけ挙げてみますと……。施設について「家とは思えない」という子供が複数人いる一方で、すでに18歳以上になって施設を出た男性は、施設について「家みたいに感じている」と答えていました。もちろん、それぞれの子供によって考え方が違うというのもあると思うのですが、ひょっとすると、施設を出た後で『家のような存在だったな』と思える方もいるのかもしれないと思いました。また、職員の方々は、施設を出た人にも「何かあったら言うんだよ」「またおいでよ」と言っていたことも強く印象に残っています。施設にいられる期間、人数にはどうしても限りがある。けれど、大人になっても施設で過ごした経験は支えになってくれる。「大きな家」というタイトルは、単なる物理的な意味だけでなく、そうした願いも込めてつけられたのかもしれないと思いました。

また、職員さんたちにも多々感情移入をしました。職員の方々にもそれぞれの家庭があるでしょうし、施設の仕事以外の人生があるはずです。施設内の子供たちとの関わりについても、出来ることの限界があるのだと思います。人も時間も限られた中で、子供たちとどう関わっていくのが正しいのか。職員の方々は、みな悩みながら日々を過ごしているのではないかと思いました。

エンドで流れる「トンネル」という歌も、本作品によく合っていて、視聴後の感動を増幅させてくれたと思います。

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