新しい作品を作ることで気が付いたこと。

※これは自分の備忘録として書いておくものです。かなり私的な内容ですが、自分の創作活動において大事な気づきになりそうだと思ったので、思い切ってここに残しておくことにしました。


九州壇氏としての公表はしませんでしたが、僕は先日新作を完成させました。
その制作を通して気が付かされたことがいくつもあって。良い意味で諦めがついたおかげで、今はかなり楽な気持ちになっています。
今回は、その過程について少し書いてみます。

少し前から、自分の物書きとしてのスキルに限界を感じていました。
例えば、自分の書ける世界はかなり限られていることがあげられます。僕は臨場感あるバトルが書けないし、恋愛の過程を書くのも苦手です。そのため、自信をもって書けるストーリーにかなり制限を受けています。また、これらを得意にしたいと願ってもどうしても得意になれないとも感じています。これは、自分の練習不足や人生経験の乏しさからくるものだと思います。

「創作に勝ち負けなんてない」
「自分の持っているものを生かして良いものを書けばいい」
そう本心から思っています。しかし一方で、他の方の作品を読んでいると「この人は自分が持っていないものを持っているなあ」と感じて悔しくなることがずっと続いていました。

そんな思いとともに、だんだん薄れていった思いがあります。
それが、「自分にしか書けない物語があるはずだ」というものです。
こういう思いは、制作者なら誰しも大なり小なり持っているのではないでしょうか。ただお恥ずかしながら、当初の僕はその思いがまあまあ強い方だったと思います。「創作を続けていれば、自分にしか書けないものを書けるようになるだろう」と楽観的に考えて、僕は創作を続けてきました。しかし歳を取るにつれて、そんな考えも単なるうぬぼれに過ぎないかもしれないと思うようになっていました。

ただ、そうは思いながらも、「自分にしか書けないものを書きたい!」という思いは捨てられなくて。以前から、秘策として考えていたことがありました。それが、自分の中の要素を掛け算してみるという戦略です。具体的には、「自分が普段している仕事」と「ノベルゲーム制作を趣味にしている」という特性を掛け合わせれば、他の人には作れないものが作れるのではないかと思っていたのです。
このアイデアは長い間自分を支えていたと思います。他の方の素晴らしい作品を読んでめげそうになっても、「まあ、自分には掛け算をするという最終手段があるから……」と考えることで落ち込まずにすんでいたところがあると思います(笑)

そんな思いを長らく抱えていた僕ですが、ついにこの「掛け算」を実践してみることにしました。「僕らのノベルゲーム」を完成させた後、九州壇氏としての制作を進めながら、この「掛け算」を実践した作品もこっそりと作り続けていました。そうして今年8月末、ついにこのゲームを公開することが出来たのでした(創作に対する姿勢がこれまでと大きく違うため、別名義での公開としています)。
自分なりに、一生懸命作りました。協力して頂いた方に恥じることがないような作品に仕上がったと自分では思っています。
そうして新しい作品を作ってみて、本当に良かったです。おかげで、沢山の学びがありました。

まず、自分の要素を掛け算してみるという戦略について。これは、自分にしかできないものを作るという観点でみればやっぱり正しいことなのだと実感しました。他の方ではおそらく苦労するであろう課題も、わりと楽にクリアすることが出来たんじゃないかなと思います。
また、僕ら社会人創作者にとって「社会人」であることはデメリットに感じられることが多いのですが、「社会人」をメリットにできたと感じた点もとても良かったです。「こういうやり方をすれば社会人であることは強みに変わるのだ」、「社会人創作者も捨てたものではない」という学びは、心を楽にしてくれました。

それと同時に、強く実感したことがあります。それは、「自分の場合、こういう方向性で創作を続けることは難しそうだ」ということです。

この方法を楽しく思えるのであれば、この道をどんどん極めていけば良いのだと思います。同じような方向性でゲーム制作をしている方は今のところいなさそうですし、新作はありがたいことに好評を頂いていると感じます。「多くの人に作品を読んでもらいたい」、「他人に(なるべく良い)影響を与えたい」、「自分にしか作れないものを作りたい」という思いを最優先するのであれば、このやり方を極めることが自分にとって正しい戦略なのだと思います。
ただ……。今回の制作を通して、「自分が創作に求めているのは別のことなのだ」とはっきり気が付いてしまいました。
僕は「シナリオライターとしての腕を磨く」ことが好きで、「人の心を動かせるようなお話を書きたい」と思って創作を続けている。「多くの人に見てもらいたい」、「自分にしか作れないものを作りたい」という思いよりも、まずそれが先にあるのだ。
そのことを、ここまでやってみてようやく自覚しました。

新作についてはバージョンアップする予定がありますが、それが終わってしまえば続編などは多分作らないだろうと思っています。少なくとも、創作活動のメインとすることはありません。

掛け算をメインにするという戦略を捨てて創作を続けることには、不安もあります。今までそれを心の支えにしていたところがあるからです。
ただその一方で、なんだかすごく気持ちが楽になっている自分もいます。

「自分はこの道でコツコツ腕を磨いていくほかないじゃないか。
なぜなら、そうしなければ自分は満足できない体質なのだから」

そう諦めることができたおかげで、視界がすごくクリアになったと感じています。

ここまで書いてから読み返しているのですが、本当に私的な内容ですね……。「良い歳した大人が書くことじゃねえな」という思いもあり、一度は消してしまおうかとも思いました。
ただ、等身大の自分を認めて活動していく決意表明としてはありかなと思いましたので、やっぱり残すことにしました。
ここまでお付き合い頂いた皆様、ありがとうございました。
これから九州壇氏がどんな作品を作れるかは分かりませんが、自分なりに少しでも良いものを作れるよう、これからも細々と活動していきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

この記事へのコメント

通りすがりのぼっち
2024年06月08日 22:20
はじめまして。コメント失礼いたします。
去年からノベルゲームを制作している者です。
制作に活かせそうな情報を求めて、色々と見て回っていたところ、ふとこちらの記事が目に留まりました。

読ませていただき、まず「ああ、自分も九州壇氏様と似たような感じで、本当の創作欲に気づいたなぁ」と思い出しました。

私事で恐縮ですが、当方の創作活動は、イラスト→漫画→挿絵あり小説→ノベルゲーム(今ココ!)と変遷しております。
その中で一番の転機は、漫画を描くことを諦めた時でした。
その際に創作動機を見つめ直してやっと、自分は「絵を描きたいのではなく、物語を描きたいんだ」と気づきました。

色々葛藤はありましたが、効率化に魂を売った画像制作に振り切り、AI以外の文明の利器をめいっぱい使うようになりましたw
結果、画像の出来栄えは格段に上がったと自負しています。

九州壇氏様は最後に「良い歳した大人が書くことじゃねえな」と書かれておりますが、当方も大人になってから気づきましたよ!ww
なので意外と、根本的なところを錯覚している創作者もいるんじゃないか…?と思いました。
そしてこの記事は、そういう方の道しるべになるのではないか…とも思います。

率直で素敵な記事を読ませていただき、ありがとうございました。
どうぞ九州壇氏様のペースで、ご自分の満足を求めていってください!
いつかそれが形になることを、同じ創作者として応援しております。
九州壇氏
2024年06月09日 20:28
はじめまして、九州壇氏と申します。
このたびは大変嬉しいコメントをありがとうございました。通りすがりのぼっちさんの心に響いたのなら、こうしてブログ記事を書いた意味もあったのだなと思いました。

自分が本当は何をしたいのかって、分からないですよね……。自分がそうだったのですが、実際に行動してみてやっと気がつけることも少なからずあるのだと思っています。
創作活動に対するエールもありがとうございます。僕の場合、新作を作ってからもうすぐ1年経ちますし、そろそろ新しい作品を形にしていきたいなと思っています。
通りすがりのぼっちさんもノベルゲームを制作されておられるのですね。本当にやりたいことにやることをしぼることについても、台へ共感できました。同じく創作を愛するものとして、今後のご活動も応援しております。

コメント誠にありがとうございました。
2024年06月11日 05:24
読ませていただきました

>「この人は自分が持っていないものを持っているなあ」と感じて悔しくなる
たしかに、こういう感情ってありますよね
私も人の作品を見て、これは自分には書けない、自分に小説(文章)は無理だ…
と思って絶望していた時期がありました

>「社会人」
時間が取れないというデメリットだけじゃなく、
社会人をやっているからこそできること…って案外にありますよね
私も片手間でサラリーマンをやりながらなので、そういうのを実感する機会は多々ありました

>「シナリオライターとしての腕を磨く」ことが好きで、
>「人の心を動かせるようなお話を書きたい」と思って創作を続けている。
>「多くの人に見てもらいたい」、「自分にしか作れないものを作りたい」という思いよりも、まずそれが先
こういう順番づけって、私はなんとなくですませてしまっていましたが
きちんと向き合って本当に何がしたいのか、を考えるのはとても大事ですね

これからの創作活動が楽しいものになりますように
九州壇氏
2024年06月14日 18:09
BLACKGAMERさん、ご無沙汰しております。
この度はコメントありがとうございます。
共感して頂ける部分もあったようで、嬉しいです。
今回の件で、自分のしたいことをより明確に理解できたように思っています。
そのしたいことを大切にして作品を作っていきたいと思いました。

エールのお言葉もありがとうございます。
BLACKGAMERさんの創作活動も楽しいものとなるよう祈っております。