映画「ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して」を見ました。

本日は、映画の感想を久々に書いてみようと思います。ご紹介するのは、2013年公開の「ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して」です。本作品の主人公の1人であるジョルジュ・ドゥヴルーは実在の人物であり、人類学者であると共に精神分析医でもありました。彼は、民族精神医学という新しい分野を確立した人物としても広く知られています。本映画は、彼の著作をもとにしてつくられた実話です。そのことが、本作品の魅力を高めているように個人的には思いました。
以下、ネタバレ注意です。










ジミーは原因不明の頭痛に悩むインディアンであり、彼の精神分析をジョルジュが担当します。面談を通じてジミーの心の中に分け入っていく様子が本作品の主要な展開となります。穏やかでどちらかと言うと多くを語らないジミーと、陽気に振舞うジョルジュ。対照的でもある彼らが治療を通して友情を築いていく点が、本作品の大きな見どころだと思います。印象的だったのは、医師であるジョルジュがかなり「自分」を出しながら面談を行っていたこと。「君がそうしたのも仕方がなかった!」と熱弁したり、「もし私なら……」と自分のことを話したり。ここまで自分を出していくやり方は、少なくとも今のスタンダードなやり方ではないと思います。ジョルジュもまた、ジミーのことをいち個人として好ましく思っていたのかなあと思いました。

ジミーの頭痛の原因はどこにあるのか。ジミーの心の中には、どんなものが眠っているのか。それが徐々に明かされていく様子も、本作品の大きな見どころだと思います。ジョルジュは夢を手掛かりにしてジミーの心を探っていきます。現在、夢分析を臨床現場で積極的に用いている医師は少ないとは思います。それだけに、「昔はこんな風に夢を解釈して、それを本人にも伝えていたのか」という点に少し驚きました。
ジョルジュに促されながら毎日話をしていく中で、ジミーは過去の出来事を思い出せるようになっていきます。また、「何が原因だろう」と自分で自分を探る言動も見られるようになりました。途中で一時的にジミーの不安感が強まりますが、最終的にはそれによって原因が突き止められ、症状の改善に役立ったわけです。精神分析という治療法は沢山の時間がかかり、かつ、心の奥底を覗くことによるリスクも伴いますが、効果については馬鹿にはできないものだなと思いました(正直、積極的にリピドーにからめて解釈する点はちょっとピンときませんが……)。過去の精神疾患の治療現場を見られたという点でも、大変興味深い映画でした。

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