(ネタバレ注意)ノベルゲーム「さよなら、リアル」をプレイしました。

先日、「深海の北極星」のアクアポラリスさんによるノベルゲーム「さよなら、リアル」をプレイさせていただきました。なお、本作品は特にネタバレ注意です。未プレイの方はまず遊んでみてから読むことをお勧めします。

以下、ネタバレ注意。






















「さよなら、リアル」は、ある青年が海の街でひとりの少女に出会うという物語です。前半は「ボーイ・ミーツ・ガール」タイプのストーリーで、過去の作品でみられた「お約束」の設定も多かったと思います。例えば、主人公が特別な力を持っていたり。死んだ母親が支えてくれたり。ラストに奇跡が起こって少女が救われたり。出会って3日でふたりが関係を持ったり(笑) これでもかというくらい、「王道」が詰め込まれていました。作者様も分かっていた上で敢えて「どこかで聞いたような物語」にしていたのだと思います。ちなみに、鍵系作品や「○姫」、「ナ○シカ」のネタが唐突に出てきたときは、クスリとしてしまいました。

さて、本作品の見所は、当然「real編」です。前半の真相を語るという流れでのお話ですが、こちらは主人公の狂気の描き方が良かった。前半あれだけハートフルな物語だっただけに、後半の不気味さは際立っていたと思います。特に、「孝太郎」がひとりで2人分のセリフを話しているシーンは、思わず鳥肌が立ちましたね。ほかにも、前半では彼女の絵が表示されていたシーンが、単なる背景の表示に変わっていたのもゾッとしました。前半同様過去作品と比較してみると、某作品の裏シナリオである「トモ○チの搭」の不気味さに近いものを感じました。もしくは、「永遠の夕暮れ時」が印象的なあの作品も雰囲気が近いかな? こちらも、作者様はリスペクトされていたのかもしれません。

ラストの「IF編」については、賛否両論あるだろうと想像します。ただ、僕はあって良かったと思いますね。
現実から目を背け夢に溺れる主人公は、僕達読者にも重なるところがあると思います。現実だけで処理できない苦しみを消化するため「物語」に癒しを求めるという点は、我々も同じですから。こうした観点から、僕は「物語の中でくらいは、綺麗なものを信じさせてほしい」と常々思っています。本作品は確かに悲しい物語ですが、「IF編」があるおかげで、主人公だけでなく読者も少し救われる気持ちになれたと思います。

さて、同じ制作者としての目線でも少し感想を述べさせていただきます。前半であれだけコテコテの王道の物語を書きつつ、「real編」で全部ひっくり返してしまうという構成は見事でした。特に勉強になったのは、前半のラスト付近の描き方ですね。つまり、いったん「phantasm編」で終わったものだと思わせるためには、タイトルを回収しつつ、綺麗にオチをつける必要があるんですよね。自分ならどう書くだろうかとも考えたのですが、僕ではあそこまでうまく「さよなら、リアル」というセリフにつなげられなかっただろうと思います。「夢と現実が反転する」というくだりは、なるほどと思いました。

気になったところとしては、前半開始時の「Phantasm」の表示は不要であったと思います。タイトルに「さよなら」という文字があるだけで某「永遠の夕暮れ時」作品を思い出してしまった僕は、この「Phantasm」の文字を見ただけで、色々と察してしまったのですね。前半でうまく騙してくれることで後半の魅力が際立つ作品だと思いますので、あそこまで大きなヒントは与えなくてもよかったのかな、と。

だいたいこんなところでしょうか。「どこかで見たことあるようなお話」を逆手にとった、構成が見事な作品でした。学ぶことも多かったので、自分の作品作りにも生かしたいと思います。

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