(ネタバレ注意)エイトストーリーズ「Novelers’ materialにようこそ!」を読みました。

少し時間が空いてしまい申し訳ありません。今回もエイトストーリーズについての感想、および作者さん当てをしたいと思います。2番目は「Novelers’ materialにようこそ!」です。一言で言いますと、非常にレベルの高い物語でした。同じ作者として羨ましさを覚えるほどに力を持っている作者さんだと感じます
この作品については、作者さんが誰だと思うのかを結論付けるのに時間を使ってしまいました。あまり自信もないので、外していたらすみません。では、以下ネタバレ注意。






まずは読者としての感想について。
感動しました。ストーリーについてもですが、その完成度に対して深い感銘を受けたのです。物語を構成する要素それぞれの完成度が高く、素晴らしい出来に仕上がっていると思います。
本作では、人の命にかかわるような出来事は起きません。しかし、作中で起こる事件、ある登場人物が見せる意外な一面が、作品に緊張感をもたらしています。読ませる力はかなり強いです。
登場人物の描き方も優れています。特記すべき人物は、やはりマスターでしょう。温かい雰囲気はもちろんですが、知見の深さ、懐の広いところが彼の魅力ですね。こんなマスターのもとで自分もバイトさせてもらいたいと思ったほどですw
また、クライマックスに向かう展開も非常にきれいでしたよね。(とはいえ、僕はエンドロールが流れるまでしか読んでいませんが。もう少し続きがあるような気も)。共通ルートで出てくる「綺麗好き」ということばをここまで上手に組み込むとは思いもしませんでした。

次に、作者としての感想を。はっきり言って、羨ましいですw それほどに、作者としての才能と経験の差を感じさせられました。
まず文章。簡素で分かりやすい地の文には、同時に語り手である「史」、「響」のものの捉え方も表現されています。一人称のお手本となりえる文章だと思います。しかし、何よりも優れていると思うのは、文章に「余裕」や「遊び」があり、それでいて「無駄なものを読ませられている」とは全く感じさせないところです。展開とは関係のない「遊び」の部分(本作で言えば、湯気と水蒸気の違いや、「チョウフク表現」、キャビンアテンダントについて、などなど)って、物語の奥行き、リアリティを作ってくれるものだと思うんですよね。しかし、あまりにも無駄な部分が多すぎると読み手を退屈させます。僕自身、読者が退屈しない「遊び」をどうにかして作りたいな、とぼんやりと思っていたのですが、まさに自分が理想として考えていた表現がこの作品にありました。「遊び」を書く際にも「登場人物らしさ」を入れてあげることで、読者の興味を切らずに読ませることができるのかもしれません。
また、物語の展開についても、唸らされました。登場人物3人の成長が描けていること、共通ルートで提示された情報、展開を十二分に生かしていること、「Novelers’ materialの宣伝を兼ねた物語」としての出来も良いこと。1時間程度のプレイ時間で、これだけ多くの良さを持っている物語はなかなか描けないと思います。
以上より、単に文章が上手であるだけでなく、書き手としてのシナリオの組み方も大変優れていると感じました。物語自体の感動に加え、完成度の高さへの感動で、読後はため息が出てしまいました。どうすればこんな作品が書けるようになるのか、本気で考え込んでしまいましたw 本を読んで、自分も筆を執って表現する。もちろん、その積み重ねが表現を磨くうえで大事ですが、この作者さんにはシナリオを組み立てるセンスの良さもあると思います。

では、肝心の作者さん当てについてですが。実のところ、読了直後は少し迷いました。もっとも疑っているのは、あいはらまひろさんです。飾らないけれど適切な表現がされた文章はかなりの読書家が書いたものではないかと推測されます。また、魅力的な登場人物の描き方にしても、立ち絵がなくても気にならないというあいはらまひろさんの文章に通じるものがあります。さらに、謎解きのシーンで論理的な思考を積み重ねていく手法をとっているのも、あいはらまひろさんの作風に似ていると感じます。……ついでに。「二礼二拍手一礼」もありましたよねw
迷うに至ったのは、ある登場人物がけっこう「黒い人物」として描かれているためです。もちろん、あいはらまひろさんがすっきりとした人物しか書かないわけではないのでしょうが、僕の中のあいはらまひろさんのイメージとは少し違っているように思ったのです。
しかし、何度か読んでみて、かつ、2日ほど時間をおいてみると、やはりあいはらまひろさんで良いのかな、と改めて感じるようになりました。「黒い人物」についても、救いようのない悪党としては描かれていませんよね。これについても、あいはらまひろさんが書いたものとして解釈してもよいのではないかと考えます。
他に疑う作者さんとしては、ケイトーさんでしょうか。登場人物の弱い部分まで描く姿勢は似ていなくもない。ただ、ケイトーさんにしては、文章の「遊び」が多いような印象を受けます。漫才のようなやりとりもなかったですよねw 他の作品を読まないと断言できませんが、おそらく違うように思います。
それから、「だいだいsnow」の栗桐文輝さんも候補に挙がりますが、文体、作風がちょっと違うかな、と感じています。こちらも、他の作品を読んで結論付けたいと思います。
以上です。この物語には「自分も、もっともっともっと頑張らねば」と思わされましたw
作者さんについてはおそらくあいはらまひろさんだと思う、のですが、間違っているかもしれません。その時は、笑ってやってください。
では、次に「Without you」を読む予定です。また更新しますので、お待ちくださいませ。

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