(ネタバレ注意)「半透明パレット」を読みました。

しばらく更新が遅れてしまいました。エイトストーリーズが公開されていくらか経ちましたが、いまだに答えを知らずに作者さん当てに奮闘している九州壇氏ですw しかし、ついに終わりが見えてきましたね。8つ目は、「半透明パレット」です。非常に好みの物語でしたし、その描き方の上手さに感嘆しました。そして、作者さん当てにたいへん苦労しましたw 以下、ネタバレ注意でお願いします。




















まずは、読者としての感想を。
優しい物語だと思います。九州壇氏のことを少しでもご存知の方であれば納得して頂けるでしょう、こういう物語は大好きだし、自分でも描きたいと思うもののひとつです。読んでいて気持ちがほっこりしますよね。エンドロール直前まで読めたのですが、めちゃくちゃラストが気になりますw
眠り続けている人とそれを待つ人、という構図も、自分には興味あるものです。自分が以前書いた物語に似たものを感じて、つい考え込んでしまいました。自分の話をして恐縮ですが、僕は同様の問題をかなり暗い雰囲気で描きました。当然のことながら、あまり一般受けはしませんでしたね。とはいえ後悔していないし、今でも同じものを作ってもいいなと思うのですが。一方で、「じゃ、あれをもっと読みやすく書きかえられるのか」と言われると、それはまた別問題なんですよね。その点でも、「半透明パレット」の描き方は勉強になります。けっこう重たい問題を内包しているのに、それをあまり感じさせない作品作りになっていました。
では、次に作者として思うところを。
文章は非常に読みやすいです。難解な表現はそれほど出てこないし、テンポよく読ませてくれます。加えて、それぞれの登場人物らしさが文章の端々からうかがえるため、注意して読むと一文一文が楽しめましたね。かなり文章を書きなれていらっしゃる印象を受けますし、何よりもしっかり登場人物を作りこんでいるように思います。
また、起承転結の「承」の描き方がうまいですよ。テンポよくイベントが進んでいくだけでなく、その継ぎ目であるゆったりとしたシーンでもしっかり読ませてくれます。ほのぼのとした雰囲気がある物語って退屈と紙一重のところがあると思うのですが、「半透明パレット」にはそれがありません。こちらについても、何気ないやり取りの中に「登場人物らしさ」を感じられたためではないかと思いました。
では、作者さん当てについて。
これほど間が空いたところからもわかると思いますが、これまでにないほど悩んでいます。「この作者さんだろう!」と言えそうな根拠が見つけにくいと感じました。
先ほども言いました通り、文章については、それぞれの登場人物らしさのある表現が目立ちますよね。細部の文章にまで「登場人物らしさ」があり、綺麗にまとまっています。しかし、それが作者さんらしさを隠してしまっていると感じています。
「おっ! これは個性的だな」と思える表現に出会ったとき、それが「作られた表現」なのか、「作者さんらしさ」なのかを判別せねばなりません。その登場人物らしくない「浮いた」表現があれば、「これは作者さんの癖なのかな」と考える根拠になります。しかし、ここまで上手に登場人物を書き分けられると、どの部分が「作者さんらしさ」にあたるのかがわからなくなってしまうと思うのです。この物語の文体からわかることはあまり多くないと感じました。強いて言えば「登場人物を作りこむことができて、かつ、書き分けに慣れている作者さんかもしれないな」という程度じゃないでしょうか。
これだけでは予想するのが難しいですので、他の手掛かりを探してみました。僕が思う、この作品の最大の特徴は「登場人物がみな優しい点」です。どの登場人物も他人を思いやる気持ちがあり、読んでいて温かい気持ちになります。
登場人物が良い人ばかりの物語って、下手をすると「ぬるい話」になってしまうと思いますが、この作者さんはテンポよく楽しく読ませることができていますよね。「良い人ばかり」の物語を書くには苦労するところも多いと思うのですが、様々な工夫をしてでも登場人物の温かさを大事にしたいと考えてらっしゃるように感じます。
ここからは僕のまったくもって個人的な推測なんですが。この作者さんは、「物騒な物語よりも、読んでいて気持ちの良い物語を書きたい」という思いがかなり強いのではないかという印象を受けます。そう考えてみると、1番疑わしいのはあいはらまひろさんです。
当初、僕は「Novelers’ materialにようこそ!」という物語が、あいはらまひろさんによって書かれたものだろうと考えていました。しかし、この物語も「あいはらまひろさんらしさ」のある物語です。いったいどちらをあいはらまひろさんが書いたのか。最後に決め手として考えたのは、「あいはらまひろさんはどちらの作品を書きたいと思うだろう」ということです。どちらもレベルの高い物語ですが、「Novelers’ materialにようこそ!」に見られた「主要人物の黒い一面を物語の展開に利用する」手法は、あいはらまひろさんらしくないと感じます。
次に疑うのは、八久斗さんです。
非常に申し訳ない気持ちで言うのですが、僕は八久斗さんの作品で「ヒツゼンセイ」を読んでいなかったのですよね。今回はじめて「ヒツゼンセイ」を読んだのですが、これもレベルの高い作品です。「カキフライにタルタルを」などしか読んでいないときにはわからなかった八久斗さんの優れた手腕を見ることができました。
「ヒツゼンセイ」で見せてくださった登場人物の内面を描く上手さは、「半透明パレット」の登場人物の性格の作りこみに共通するところがあります。また、「半透明パレット」の史の少しおどけた表現も、「カキフライにタルタルを」を書ききった八久斗さんであれば書けるのではないかと思います。しかし、登場人物の温かさを前面に押し出す書き方を見ると、やはりあいはらまひろさんの方がより疑わしいと思うのです。
とはいえ、自信はまったくありませんけれど。
以上です。この作品は綺麗にまとまっていて「丸い」分、予想がなかなか難しいと感じました。作者の個性が前面に出た作品が劣っているとは決して言いませんし、個人的にはそういう作品が好きなのですが。しかし、ものを書きなれてくると、文章にごつごつした部分がなくなってくるのもまた事実。そういうわけで非常に苦戦しましたが、あいはらまひろさんを1番に疑うと結論付けました。これだけ時間をかけたので、もう間違えても後悔しません。笑われても構いませんw
では、「Novelers’ materialにようこそ!」についてもう一度言及したのち、最終予想をまとめたいと思います。長かった「作者さん当て」もついに終わりですね。期待せずにお待ちくださいませ。

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