(ネタバレ注意)ノベルゲーム「ビューティフルパフォーマー」をプレイしました。

2012年になってようやく3回目のブログ。ブログがますます滞っている九州壇氏ですが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。
さて、本日は久々にノベルゲームの感想を書きます。今回は、「ビューティフルパフォーマー」という作品を取り上げさせていただきます。巷の評判を聞けばわかりますが、わざわざ僕なんかがご紹介する必要もない有名作ですよね。が、久々に「ビビッ」ときた物語でしたので、僕も語らせていただくこととしました。以下、ネタバレ注意。











まず断っておきますが、ここのブログで僕が取り上げるのは、僕が好きな作品ばかりです。どの作品にも、それぞれの長所があることに間違いありません。それを前提であえて言わせていただきますが、この作品は久々に大きな満足感を与えてくれ、学ぶところが特にたくさんあったように思います。

この作品の魅力をひとことで言ってしまえば、「面白さを次々にみせてくれるところ」です。……うん、バカっぽい答えですねw しかし、これだけ大小、喜怒哀楽さまざまな展開で読ませる作品はなかなかないと思います。夢にむかうキャラクターたちがぐいぐいと物語を引っ張っていくところ。お笑いのネタが惜しみなく繰り出されるところ。恋愛要素も絡めてくるところ。こういった様々な面白さが波状攻撃のように押し寄せてきて、読者を飽きさせません。また、それだけ色々な方向の面白さを持つのに、物語として破綻していないところも素晴らしいです。これだけ「働きかける」物語を書くのは大変だっはずですが、最後まで書ききったところはお見事というしかありません。エンターテイメント性という面でいえば、僕の中では5本の指に入るかというほどの作品でした。



さて、次に同じ書き手としてこの作品を語ってみます。今回は、「物語の面白さ」に注目しました。この「ビューティフルパフォーマー」、内容としては比較的シンプルですが、面白さを持続させる努力をかなりしてらっしゃるなと感じました。
この作品の読ませる力としてベースにあるのは、登場人物とのやり取り、そして、彼らの一生懸命さが伝わってくる描写です。青春ものととしては比較的よくある展開なのかもしれませんが、しっかりと読者を引き込むだけの力強さがあります。また、そこに「お笑い」という個性が上手に絡んでいて、楽しく読むことができました。

さて、僕が一番優れていると感じたのは、やはりこの「お笑い」の描写です。この作品を読ませる大きな武器になっていると思います。しかしその分、「書くのに相当苦労したんだな」というのが文章からひしひしと伝わってきました。
僕はこの作者さんを知りませんが、プロの芸人ではないでしょう。そんな方が、めちゃくちゃ面白い主人公と巴を描き、さらに彼らが腕を上げていく様を見せる。それは、いくら作者の方がお笑い好きだとしても難しいと思います。同様に、松田というプロを登場させ、彼にお笑いを語らせる、というのもかなり度胸のいる展開です。自分を超える能力を持つキャラクターを書こうとすれば、ぼやかして書きたくなるのが物書きの本音であるはずです。事実、この作中でも音楽については上手にぼかしていると感じます。しかし、お笑いについてはそうではありません。主人公、巴、松田というキャラクターをしっかり書こうとする努力が見られ、彼らのやり取りには説得力がありました。果敢に彼らを書ききった作者さんには、本当に頭が下がりますね。
少しだけ気になった点としては、後半少しだけ勢いが落ちてしまうことですね。煮詰まりながらも徐々にネタが完成していく雰囲気はよく伝わってきましたし、かなりリアルでした。しかし、前半が楽しい分パワーダウンが強く感じられてしまいます。もう少しだけ描写を絞り、かつ、巴が恋愛でドギマギしている描写を加えてみるとか、町内会でのやり取りをもう少し掘り下げるなどあとひと展開加えていれば、一気にクライマックスにつなげることができたように感じました。

とはいえ、非常に良い作品でした。僕が好きな作風とは少し違っているタイプの作品ですが、絶賛している方が多いのもうなづけました。読者として楽しませてもらいましたし、作者として学ぶところが多かったです。ちょうどエンターテイメント性、読ませる力についても勉強したいと思っていたところですので、この作品の長所をもう一度見つめなおしてみようと思います。みなさんもこの物語を読んでみてください。

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